ジョン万次郎が日本への帰国を果たした1851年、反奴隷制の小説として知られる「アンクル・トムの小屋」が奴隷制廃止主義の新聞に連載されました。物語はケンタッキー州を中心に展開します。奴隷の若い母親イライザが、息子のハリーと別々に売られるのから逃れるため、決死の覚悟でオハイオ川の氷に飛び移り、氷伝いに対岸のオハイオ州へ逃れる場面があります。広大なオハイオ川を実際に目の当たりにすると、小説とはいえ「母の強さ」に感動を覚えます。
リンカーンは作者のハリエット・ストー夫人に会った際、「そうか、このしとやかな婦人があの南北戦争を引き起こしたのだな」と語ったといわれています。リンカーンもアンクル・トムもケンタッキーで生まれ育ちました。ケンタッキーは南部奴隷州で、その北部は自由州のオハイオです。
南北戦争で分裂したアメリカには大統領が2人いました。北部のリンカーン、南部のデービスともにケンタッキー生まれです。中立を宣言したケンタッキーは最大の激戦地となり、多くの悲劇が生まれたのです。
教会で人種差別を受けた万次郎をホイットフィールド船長が守ったとも伝えられていますが、万次郎が奴隷州ではなく自由州のマサチューセッツ州で生活できたのは幸運だったのかもしれません。
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