私と家内は大統領選挙が終盤を迎えていた昨年秋、ケンタッキー州でのサミット大会に初めて参加しました。第16代合衆国大統領リンカーンの出身州であり、フォスターが作曲した“ My Old Kentucky Home ”が州歌になっていること…。行く前のケンタッキーについての知識と関心はこの程度のものでした。ところが、地域分科会プログラムにおける3泊4日のホームステイが終了する頃には、「ケンタッキー」という州が私たちにとってかけがえのない特別な場所として深く心に刻み込まれるようになっていたのでした。我々のみならず多くの日本人参加者にこれ程までの想いをもたらしたものは何だったのでしょう。ブルーグラス州とも称される、のどかで美しい風景に魅了されたことも一つです。しかしそれ以上に、一般家庭でのホームステイを通じて、その家族や地元の人達との触れ合いの中に生まれた親しみや体験を共有できたことによる感動があったことが最大の理由であることは間違いのないところです。
我々のホストファミリーのGray家は高校教師のご主人と奥さん、2人の小学生の息子とおばあちゃん(それに親日的2匹の猫)が一つ屋根の下に暮らす賑やかな家庭でした。彼らは最初の出会いの時からごく普通に我々を“家族”として受け入れてくれました。家では同じメニューの食事をし、近くのストアでの買い物や公園・美術館などにも一緒に出かけました(そういえば子どもらが通う学校に勉強道具の忘れ物を届けに行ったことも…)。お陰で地元住民ならではのライフスタイルを味わうことができました。外国に行くと急に無口になる家内はホームステイ中、暇さえあれば男の子らに「折り紙」を熱心に伝授していました。帰国後の便りによると、学校から頼まれて、母子が一組の先生役になって折り紙を同級生らに教えているそうです。短い滞在ではあったものの、我々がケンタッキーの一角にこのような思いもよらぬ痕跡を印してきたことを想像するだけで楽しい気分にさせられます。
写真1: |
Gray家との最後の晩餐。左から家内、おばあちゃん、トビー(小一)、お母さんのシェイラ、マイカル(小二)、
お父さんのジョー、筆者。 |
写真2: |
別れの朝、愛敬のあった猫の「Zoe」は、別れを惜しんでか離れようとしません。 |
|